畜産物の中で、最も季節の影響を受けやすいのは鶏肉です。
しゃも肉であるはかた地どりを例にとると、
・夏場 1羽 平均重量 2.2-2.5kg
・冬場 1羽 平均重量 2.5-3.0kg
となります。
はかた地どりの平均飼育日数は80-90日程度です。夏と冬では1羽あたり平均 0.3kg-0.5kgの差が出てしまいます。同じ肥育日数と餌の量で、コレだけの差がでるのですから、生産者にとっては死活問題ですよね。
最近町のお肉屋さんも減り、スーパーなどでお肉を買うことが多くなっていると思います。スーパーに行くと、若鶏のモモ肉やムネ肉、手羽先などがパック詰めされて販売されています。スーパーの店員さんが裏で捌いているのでしょうか?
そんなわけないですよね。スーパーへはすでに骨抜き処理されたお肉が、部位ごとに2kgのパックとなって納品されます。それをお店の人がパックを開けてトレイに詰め替えているのです。
このとき問題が2つあります。
1つは鮮度。
2kgパック状態の鶏肉は、鶏をおろした(と畜した)日から7~10日程度の
賞味期限がつけられています。つまり店頭に並んでいる鶏パックが新鮮なものだったかは分かりません。と畜した日から3~4日たったものかもしれません(かといって違反ではありません)。
もう1つはドリップ(肉汁流出)です。
2kgパックを開けると大量の肉汁が流れ出ます。時間の経過や梱包時の圧迫からお肉から大量の旨味が肉汁として流出しているということです。
これではスーパーの鶏肉はおいしくないといわれてもしょうがないですね。
九州食肉学問所でもコスト・労力面から、桜島どりは2kgパックで入ってきます。
ただし、最も新しいものをその日に処理することで、なんとか肉汁流出問題を抑えています。
では鶏肉をおいしい状態で食べるのはどうしたらよいのでしょう。
答えはひとつ。
新鮮な鶏肉を購入してきて、自分で捌くこともしくはお肉屋に捌いてもらうことです。
そこでこれから、鶏肉の捌き方は説明しながら、鶏肉の部位を説明していきます。
鶏肉のカット前の状態を丸鶏もしくは中抜きと呼びます。中抜きというのはお腹の内臓肉を取り出していることからそう呼ばれるようになりました。
この中抜きをお肉屋さんに捌いてもらうのが一番だと思います。中抜きの状態ですとドリップは極小に抑えられます。また鮮度はお肉屋さんに確認できます。
問題は、中抜きを捌いて「モモ肉だけほしい」といっても嫌がられるので、ムネ肉、大手羽、さらにササミなどを1~2日以内に使いきってしまう計画が必要です。
若鶏であれば正肉(しょうにく:骨抜き後のお肉)はせいぜい1羽800~1000g程度ですから2-3人の家庭であれば、使いきりには問題ないでしょう。
この中抜きであれば、単価は圧倒的に安くなるので経済的です。
実際に鶏肉を中抜きの状態から正肉にまで捌いていきます。ここでは地どりを使います。
まずは中抜きの下半身からモモ肉をはずしていきます。
最初にモモ肉とムネ肉の境目にナイフをいれます。
このときムネ肉を傷つけないように、モモ側に刃を向けるのがポイントです(両側やります。)
両側の足をもち、股関節をはずします。
親指の先のほうに見える白い球のように見えるのが股関節です。ぽっこという音をたてて外れます。
外れた股関節から、骨盤にそってナイフを入れていきます。(両側おこないます)。
骨盤から両足を剥ぎ取ります。
ナイフですべて切り取ってしまおうとするとお肉が骨に残ってしまがちです。
ナイフで筋をきり、後は引き剥がすのがコツです。
これがいわゆる骨付きモモです。今回は骨盤をはずしましたが、付いたままの場合もあります。
写真では分からないのですが、モモの関節付近に「ソリレス」という丸いお肉がついています。
次は上半身からムネ肉をとります。*ここはすこし難易度が上がります。
肩の関節にナイフをいれ、関節をはずします。
関節にいれた切れ目から、肋骨と肩甲骨にそってナイフを入れます。このときムネ肉やササミにナイフをいれないよう注意が必要です。
関節部分と手羽先ももち、ムネ肉を引き剥がします。
剥がしたムネ肉の先には手羽元と手羽先が付いています。これを切断し、ムネ肉と大手羽(手羽元+手羽先)に分割します。
次に先ほど分割したモモ肉の骨抜きをして行きます。大腿骨にそってナイフで切れ目を入れていきます。
さらにスネ骨にそってナイフを入れます。
骨付きモモのちょうどまんなかあたりにひざ関節があります。ここにナイフで切れ目を入れると、ぱっかっと外れます。
ここにあるナンコツが丸ナンコツ(ひざナンコツ)です。こりこりして美味しいですよね。
ひざ関節から骨を剥がします。これでモモ肉開きが出来上がりです。
ムネ肉を剥がした上半身にはササミが残っています。
このササミは骨に引っ付いているので、骨肌にそってナイフを入れていきます。
そしてササミの腱を押さえ、ササミを剥がします。これで完成です。
ささみをはずしたお尻の先端にはヤゲン軟骨と呼ばれるものがついています。
1羽から、モモ肉2枚、ムネ肉2枚、ササミ2本、大手羽2本そしてガラが取れます。
ガラにはお尻にぼんじりが付いています。首の皮はジューシーでおいしいですし、首の肉はせせりとよばれ濃厚な味わいです。
鶏肉は1羽をまるごと使い切ることができれば、ワンランク上の鶏肉もリーズナブルになります。
また鶏肉の醍醐味は丸のまま楽しむことにもあります。
詰め物をして焼いたり、ゆでたり。また鍋ではぶつ切りをぶち込んで、いろいろな食感を味わえます。